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金曜日の文具(第22回/ナガハシ印刷のいいかげんノート)

「わたし的には、だいたい完璧。」

イマドキ女子っぽい抜け感のあるキャッチコピーに思わず微苦笑してしまう「いいかげんノート」をご存じでしょうか。

表紙をめくると、そこにはふにゃふにゃに曲がった、微妙にまっすぐではない罫線が。

幅は「だいたい7mm」「だいたい5mm」とのこと…… 

手書きのような、ゆるくて味のある線で、当然まっすぐに書いたり等間隔で書くためのガイドにはあまりなりません。

 

ただ、このいい加減な脱力感がちょうど良い加減でほっとしたりします。

「きれいに書こう」とか「失敗したらどうしよう」とか、書き始めに気負ってしまう方には特におすすめです。 

線を無視してあえてできるだけまっすぐに書いてみてもおもしろいですし、逆にぐにゃぐにゃの方眼罫に合わせて書けば、個性的で良い加減に味のある文字が書け(ているような気がし)ます。

ふにゃふにゃでいい加減な線とは裏腹に、用紙は書き心地に定評があり、手帳や万年筆ユーザーの間で人気が高い高級紙・トモエリバー。

薄くて軽くいわりに丈夫なため持ち運びに適しており、インクのにじみが少なく裏抜けがしにくいため、万年筆インクとの相性も抜群です。


「いいかげんノート」(各330円・税込)

(仕様:A5判64ページ)

だいたい7mmよこ罫線

 

だいたい5mm方眼罫

 

ノートのほかにサイズの異なるリフィルも取扱い中。

「いいかげんリフィル」micro5サイズ(各330円・税込)

(仕様:50枚入り)

※「いいかげんリフィル」はトモエリバーではなくコスモエアライトです。

だいたい7mmよこ罫線

 

だいたい5mm方眼罫


また、季節ごとに新色が登場しており、夏には「なつみかん」色が、秋には「モンブラン」色が展開しています。 

「いいかげんノート・なつみかん」(各330円・税込) 

 

「いいかげんリフィル・なつみかん」micro5サイズ(各330円・税込) 

「いいかげんリフィル・なつみかん 」バイブルサイズ(各440円・税込)

 


「いいかげんノート・モンブラン」(各330円・税込)

「いいかげんリフィル・モンブラン」micro5サイズ(各330円・税込)

 

「いいかげんリフィル・モンブラン」バイブルサイズ(各440円・税込)


「いいかげんシリーズ」は万年筆インク愛好家の方の間で色見本に使うとおもしろいと話題にもなりました。

罫線が水性インクをはじいて浮き上がり、絶妙なラインと濃淡のある模様をお手軽に量産できます。


開発したのは、静岡市にある総合企画印刷会社・ナガハシ印刷……の「女子企画チーム」。

以前から「女子企画チームとは?」といった疑問もあったので、この機会に担当された企画課の田中里佳さんにお話を伺いました。


Q. 女子企画チームって、どういうチームで、どういう人たちの集まりなんでしょうか

 営業や制作などバラバラな部署から、入社4年程度の若手の女性社員4名が集まって構成されていました。現在は構成が変わっていますが、当初はこのメンバーで進めていました。


Q. 製品を作ることになったきっかけを教えてください

 発想のきっかけは、デザインなどのアイデア出しでノートを使っている際に、その罫線に窮屈感を感じたことです。白紙で試してみても自由に書けすぎてアイデアがまとまらないことがありました。その時に「罫線」と「白紙」のちょうど良い加減の線が引いてあるノートがあったら使いやすいのではないかと思ったのが始まりです。

 もともと、新しいノートの使い始めの1ページ目は「うまく書こう」とか「きれいに使おう」などと考えて緊張してしまうし、うまく書けないとそのノートを使い続けるのが嫌になってしまう性格だったのでいいかげんな線ならうまくいかなくても目立たないかもしれないと思ったのも理由のひとつです。

 女子企画チームが動きはじめたタイミングでオリジナル商品を制作していくことが決まり、このアイデアを形にしていくことになりました。


Q. この「いいかげん」な線はどうやって作ったのですか

 ふにゃふにゃの線は実際に1本1本手書きしたものを使用しています。実寸の白紙の端に目安のしるしをつけて線を引きました。書いた線の太さがそのまま商品に反映されるので、シャープペンの芯の太さを変えてちょうどいい罫線になるように社内でチェックしてもらいました。


Q. デザイン上でのこだわりや気をつけたことがありましたら 

 コンセプトである「作る人」「使う人」「売る人」のそれぞれの立場に寄り添って「適当くらいがちょうどいい仕組み」を心がけて商品づくりをしました。例えば「作る人」の立場では自分たちができるだけストレスなく制作できるように作業工程を見直したり、「売る人」の立場では商品タグを天地がないデザインにすることでばらばらになっても気にならないよう整頓する手間を省けるような工夫をしています。


Q. 素材、特に紙について教えてください

 紙については書きごごちにこだわりを持って選んでいます。特にトモエリバーに関しては、地元静岡産であることや知名度が高かったことがあって選びました。印刷においてはなかなか扱いが難しい紙ではありますが、お客さまの声と会社として挑戦してみようという思いがタイミングよく重なって実現できたと思っています。


Q. 色展開とネーミングが可愛くて素敵だと思っています。どのように決めているのでしょうか

 色展開はレギュラーで販売しているものとは別に、季節感のある色を選んでいます。季節や使用シーンに合わせて選んで楽しんでいただけるとうれしいです。ネーミングについては単純に色をイメージした名前をあげて、「かわいい!」とみんなの意見が一致した名前になっています。キャッチコピーの「わたし的には、だいたい完璧。」も会議では「いいかげんでいいね!」とかなり盛り上がって決まりました。


Q.  シリーズの今後について、もしお答えいただけるなら…… 

 季節ごとに色が展開できているので引き続き、冬…春…と続けていけたらいいなと思っています。「なつみかん」や「モンブラン」に関して良い反応をいただけているので実現できるようがんばります!


お答えいただきありがとうございました!

まさか本当にフリーハンドで罫線を書いているとは……。

いい加減な線を良い加減に引くのもちょっと大変そうな感じがうかがえました……。

 

キャッチーでユーモラスなコンセプトとネーミング、そしてかわいい色バリエーション。

インク沼にハマり中の方はもちろんですが、文具ヘビーユーザーではない方にもおすすめのシリーズです!

 

八文字屋本店・OnlineStoreで取扱い中です。

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(文・写真 ナガオカ)

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