kadu/文具・手書き愛好家「南の島で1日中書いていたいです」
万年筆を愛する方に、その出会いと魅力についてお話していただく「Life&Pen」。第29回は、SNSで手書き文字や好きな文具を発信するkaduさんです。
職業:文具、手書き愛好家
保有万年筆:120本以上
子どもと共に習字教室へ
習字教室に通い始めたきっかけは多分、同級生が通っていたとか、そんな理由です。小学校2年生から始めて中学校でも少し続けていました。私はどちらかというと外遊びが大好きな子どもで、学校から帰ってきたらランドセルを置いてすぐ外遊びに出かけるようなタイプ。だけど、習字の日だけは外遊びをせずに、書くことに集中していました。書く時間が好きだったんですね。
賞状をいただいたり、東京で展示されたこともあって、自分でも「得意なこと」という意識があったので、それが余計に楽しみに繋がっていたのではないかと思います。
娘が硬筆を習いたいと言ったことがきっかけで、小学校に上がるタイミングで習字教室へ。そこで私も一緒に習い始めました。その後、息子も通い始めたのですが、2人とも中学校に上がるときに辞めていて、私だけが今も続いています(笑)。今年で16年です。ガッツリではないけれど、細々と長く続けている習い事です。
SNSでの発信で字がよりうまくなった
習字教室に通うことでそれなりに字をきれいに書けるようにはなったのですが、今のようなペン字スタイルで書けるようになったのは、Instagramでの発信が大きいです。
2016年の6月にInstagramを始めました。テレビで「手書きの投稿が流行っています」というトピックを見て、元々写真を撮ることも書くことも好きだったから、私にピッタリの組み合わせだと思いました。
最初の投稿を今見ると、うまく書けていなかったなって思うんです。私は性格的にちゃちゃっと書いてしまうほうでしたが、他の方の投稿を見ると、みなさんゆっくり一筆一筆丁寧に書かれている。それを目の当たりにして、丁寧に書くようにしていきました。自分の中で変化があったのも、与えてもらったのもInstagramです。
ペンの持ち方もInstagramでのコメントがきっかけで直しました。お恥ずかしい話ですが、ずっと人差し指と中指でペンを押さえる2本持ちだったんです……。「kaduさんには正しい持ち方をしてほしい」というご意見をいただいて、修正しました。
最初は書きづらかったんですが、押さえる指が1本になると余分な力が入りすぎないということがわかりました。横線と縦線がブレにくくなったし、シュッとした文字も書きやすい。正しい持ち方をすることが美文字に繋がるということも、Instagramから学んだことのひとつです。
多いときには1日3投稿
Instagramを始めて数年は、1日3投稿はしていました。投稿すること自体が好きなので、日常の投稿をひとつ、名言をひとつ、動画をひとつの3投稿。
子どものお弁当を作ったら、そのメニューを書いたり、名言はいくつか書き溜めておいて、動画もまとめて撮っていました。出張などで家にいないときにも投稿できるように、常にストックはしていましたね。
大変ではあったけれど、それよりも楽しいが勝っていたので、苦ではなかったです。今は自分のペースでゆっくりと投稿しています。
1日中でも書いていたい
私が文房具好きになったのには、祖父の家の隣が文房具店だったことがあります。子どもの頃から文房具店には、よく足を運んでいました。
手書き投稿は文字の美しさを見せる方が多いのですが、私は文房具もたくさん紹介しています。自分が書いていて心地良いものは、おすすめしたくなるので「みなさんにお知らせするため」という理由をつけて文房具は買ってもいいものになっています(笑)
中でも万年筆は特別。我が家では母親が家計簿を書くのに万年筆を使っていました。「子どもは壊すから使ってはいけない」と言われていたのを覚えていて、「万年筆は特別である」という感覚が植え付けられているんだと思います。
書きやすさはもちろん、インクがサラサラと出てくる気持ちよさや見た目の美しさ。周りにそれがあることで自分が潤い、満たされます。ついつい万年筆は増えてしまう筆記具です。
せっかく投稿するならば、万年筆を使いたいという気持ちもあるので、いろんな種類の万年筆をペンケースに入れて持ち歩いています。カバンのすぐ取り出せるところに入れているし、出張のときはスーツケースにまた別のペンケースを。カフェやごはん屋さんで字を書くことも多いです。ときには帰り際に「ごちそうさまでした」とお手紙を残すこともあります。常に取り出して書けるようにしておきたいし、そのときに使うのは絶対に万年筆なんです。
書くという作業が癒やしに繋がっているので「1日中、書いていていいよ」と言われたら、本当に1日中書いていたい。家だと他にすることを思い出してしまうから、南の島とかで書いていられたらいいですね。
「手書き文字」で繋がった大切な縁
ガラスペンを使ったワークショップを行なったり、「書く事を楽しむ会」という自前の文具を使って楽しんでいただくワークショップを開催しています。昨年は、本を出版。どちらもSNSを始めたことで繋がった縁です。
月曜日の16時からの習い事って、仕事も早めに上がらないといけないですし、行かせてもらっている感覚があったのですが、続けてきたことで私の中で書くことの地位が上がりました。家族からも趣味を認めてもらえています。
それにSNSを通して出会えた仲間もたくさんいるんです。ワークショップに参加してくれたことで、友人になった方もいます。手書き好きのLINEグループもあって、東京で会ったり、関西方面の方は岡山まで来てくださった方もいます。
人と関わることが好きなので、手書き好きが集まって輪が広がる何かができればいいなと漠然と思っています。「手書き」で繋がったせっかくの縁を大事にしていきたいです。
お気に入りの1本:SAILOR/ポエジー文具限定品 オーロラ
どこかに行くときには必ず持ち歩いているお気に入りです。Tono & Limsの紫っぽいインクを入れています。
PROFILE
kadu
文字を書くことを愛し、手書き作品をSNSに投稿。ボールペンから筆ペン、万年筆、ガラスペンまでさまざまな筆記具を使い分けて、美文字のコツや楽しさを提案する。ワークショップも開催。
Instagram:@kadu2544