齋藤 健一/ヘリテージ「気持ちを整理するときには、手書きのほうがいい」

 万年筆を愛する方に、その出会いと魅力についてお話していただく「Life&Pen」。第3回は、『趣味の文具箱』等のライフスタイル系雑誌の出版やWEBコンテンツの制作などを行なう株式会社ヘリテージの代表取締役社長・齋藤健一さんです。

 

職業:株式会社ヘリテージ 代表取締役社長
保有万年筆:6本(内4本を稼働)

 万年筆のインクは気分で頻繁に変えています

正直な話、僕はまだ万年筆初級者です。出会い自体は20代のときですが、本格的に万年筆を使うようになったのは2年ぐらい。きっかけは弊社が2021年から『Lightning』、『2nd』、『CLUTCH Magazine』、『趣味の文具箱』などのライフスタイル系雑誌の販売元になったことです。

「偏愛ビジネス」と呼んでいるのですが、何かに偏った愛情を持った人たち(僕が大好きな人たちです)に向けての雑誌を作っているので、その編集部もかなりニッチな人が集まっていて(笑)。経験も知識も豊かだから、僕は彼らにいろんなことを教えていただいているんですよ。

今使っている万年筆は『趣味の文具箱』の編集部に所属している社員と一緒に買いに行きました。いろんなものを試し書きして、筆圧もチェックしてもらって選んだのが「モンブラン/マイスターシュテュック149」。僕はあまり筆圧が強くないみたいで、インク出が良いしっかりとしたペン先が合っているようなんですね。「モンブラン149」は、僕の筆圧と相性がよく、流れるように書けます。使っているうちにどんどん自分の筆圧にペンが合ってくるというか、馴染む感覚もあって、すごく書きやすいんです。重量感がありますが、逆にその重さも書きやすさに繋がっていると思います。

 万年筆を使うようになってから紙も気にするようになりました。いくつか試した結果、書き心地が良かったのは神戸派計画の「グラフィーロ」です。インクが滲まないし、ペンを走らせやすい。万年筆愛用者からの支持率も高く、ノートや便箋もグラフィーロにしました。スケッチブックに書くときもあるのですが、紙の性質上凹凸があるので、安価なものよりも上質紙を選ぶように。それだと万年筆で絵を描いても滲まないんですね。ペンにこだわるほどに、これまで気にしていなかった紙の質感も意識して選ぶことが増えました。

インクもコンスタントに買っています。弊社のイメージカラーが「青」なので、青系のインクが多くなっています。とくに「八文字屋/くらげアクアリウム 01+」は、会社のロゴで使用している「ヘリテージブルー」に近いので、お気に入りです。ガラスペンを使うときには、ラメ入りのインクも使っています。

ボトルの形で選ぶ“ジャケ買い”も多くて、趣味の文具箱の増刊号『INK CATALOG 万年筆インクを楽しむ本』を作ったときには、表紙に載っているインクをほとんど買いました(笑)。収集癖はないほうなんですけど、インクは同じ青でもメーカーが違えばまったく別の色なのがおもしろくて。そのオンリーワンな感じが楽しいので、インクはついつい買ってしまいます。もちろんどれもちゃんと使っていますよ。万年筆のコンバーターにフルでインクは入れず、気分に合わせて頻繁に入れ替えています。変化が好きな僕にはその使い方がちょうどいいんですね。

 お礼の言葉は手書きの手紙で

僕はこれまでメディアやアプリ、決済などデジタルサービスの立ち上げなどの仕事に就いてきました。その頃は仕事柄、1日中、PCやスマホばかり触っていました。

このままではいけない気がして弊社がスタートしたときに「アナログを大事にしたい」と思い直したんですね。例えばメールって、言葉を頭で考えてからキーボードを打つじゃないですか。脳と手で少しばかりのタイムラグが生まれると思うんです。でも、ペンで書く行為は、考えながら書ける。頭に浮かんだ言葉を直球で文字に表せると思うんです。だから、気持ちやシンプルに頭を整理するときには、絶対アナログのほうがいいんですよね。

手紙を書くことも大事にしていて、食事をご一緒した方には必ずお礼の手紙を書くようにしています。メールだと「お世話になっています」とか定型文からスタートする、ありきたりなお礼メールになってしまうんですが、手紙だと季節の言葉やメールとは違ったお礼の言葉を伝えられる。こちらの想いもメールより相手に深く伝わるとも思います。

僕は少し遊び心のある手紙を書くのが好きなので、万年筆のインクの色を変えてみたり、赤で文字を強調してみたり、デザインも工夫しています。それもメールではできないことですよね。

若い人と話をしていたとき「自分の字を忘れた」と聞いて、そういうときはぜひ手紙を書いてほしいと思いました。短くてもいいので、自分の字と向き合うことは、自分を見つめ直すことにも繋がる気がしています。字が下手でもそれは個性ですから、書くことで見える何かがあると思いますよ。

 

お気に入りの1本:モンブラン/マイスターシュテュック149

 ペン先が大きい万年筆が好みなので、選びました。インク出が良く、スラスラ書けます。

 

PROFILE

齋藤 健一

株式会社ヘリテージ 代表取締役社長。雑誌・デジタルメディア以外にもコマース体験、リアルとオンラインでのイベントなども企画する。自身もサイトデザインやコンセプトイラストを担当。

HP:https://heritage.inc/

 

(取材・文/中山夏美 写真/Yoshimi)

 

 

 

 

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