カラシソエル/イラストレーター「万年筆を観察し、それを表現するのも好きです」
万年筆を愛する方に、その出会いと魅力についてお話していただく「Life&Pen」。第35回は、イラストレーターのカラシソエルさんです。
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職業:イラストレーター
保有万年筆数:30本
万年筆は「私の相棒」と呼べる存在です
ーーー万年筆と出会ったきっかけはなんですか?
「2014年の春頃だったと思うのですが、お風呂に入っているときに、ふと『万年筆の仕組みってどうなっているんだろう。インクはどうやって出てるんだろう』ということが気になりまして、インターネットで万年筆のことを調べ始めました」
ーーーそれ以前に、万年筆を使っている人を見て気になっていたとか?
「そういうわけでもないんですよ。周りで使っている人もいなかったですし。時期的に万年筆が流行り始めた頃だと思うので、テレビとかで見かけたからかもしれないですね。気になる以前は万年筆に触れる機会がまったくなかったです」
ーーー何か運命のようなものを感じますね。
「それで調べたりしているうちに私も万年筆が欲しくなって『PILOT/カクノ』を購入しました。他のペンとは違う書き心地やインクの水っぽい感じがすごく気に入ったんです。その次に『PILOT/ルシーナ』を買ってからは、どんどん万年筆を使う機会が増えていきました」
ーーーどちらもPILOTの万年筆ですね。
「PILOTのシャープペンを使っていたので信頼感がありました。当時の感覚では1000円のペンは高級だと思っていたのですが、それでもPILOTの万年筆なら絶対いいだろうと踏み切れたんだと思います」
ーーー万年筆の魅力は、どんな点だと感じていらっしゃいますか。
「1番は相棒感があるところだと思います。使っていくうちにたくさんの種類の中から出会った1本との相性が深まっていく感じもありますよね。書き心地、インクと紙はどれを使おうか、メンテナンスをして整えてあげたり、その過程でどんどん自分だけの相棒になっていく。そんな風に思えるのは、万年筆ならではだと思います。あとは、ほぼ筆圧をかけずに書けるところや紙にインクが馴染んでいく様子、濃淡が出るおもしろさなど、万年筆だからこそ書ける特別感もあります」

万年筆を観察するのも好き
ーーー最初から万年筆で絵も描かれていたんですか?
「当時はまだ落書きのような感じですね。日記の横にちょこちょこっと万年筆で落書きをしたりしていました」
ーーー万年筆で描く絵は、普通のペンと味わいが変わりそうですね。
「ボールペンがあまり得意ではないんです。力を入れないとうまく描けない感覚が苦手で。だから万年筆に出会ったとき『絵を描く道具にこんな素晴らしいものがあったのか!』と驚きました。インクの濃いところと薄いところが混ざりあったり、紙がインクで濡れてから乾いていくことで変化があるのも面白い。その様子を眺めているのも好きですね」
ーーー万年筆の絵も描かれていると思うのですが、ただ万年筆そのものを描くのではなく、ギミックを含めて描いているのがとても印象的です。
「昔から立体を描くのが好きなんです。構造がどうなっているのかを観察、分析して、絵に還元する遊びをしていたんですが、その遊びが今も続いています。万年筆も買ったらまずは、いけるところまで分解をして細かく観察しますね。部品は何を使っているのかとかを見るのが楽しんです」

ーーーカラシソエルさんは台湾の万年筆ブランド「ツイスビー」でオリジナルの万年筆を作っていらっしゃいますよね。
「ツイスビーの万年筆の使い心地が素晴らしかっただったので、ダメ元で連絡をしてみたのがきっかけです。オリジナルのカラーで万年筆を作らせていただきました。完成までは1年弱ぐらいかかったかと思います。カラシ色にしたのがこだわりなんですが、カラシのキャップを送って、それを元にサンプルを作ってもらいました」
ーーーカラシ色というかイエローがお好きな理由はあるんですか?
「子供の頃から気になる色ではあります。イエローはワクワクするイメージがあるからでしょうか。服は持ってなくて、イエローのものは文房具や小物だけですね。実はカラシを食べるのはあまり好きではないんです(笑)。辛いものは食べますが、好んでカラシは食べません。仕事名義も『カラシソエル』なので、聞かれることが多いのですが語呂合わせのような感じで決めたので。でも色はとても好きなので、持っている万年筆も7割ぐらいはイエローです」
アナログ、デジタル、どちらの絵も探究中
ーーー万年筆でも絵を描かれていると思いますが、デジタルとアナログはどんな使い分けをされているんですか。
「アート的な視点でいうと、万年筆で描く絵は下描きもせずに一発勝負で描くのが面白いと思っています。色や線の揺らぎであったり、人も少しバランスが崩れているのがあったり。でもそのラフさが魅力であり、作品としての良さだと思います。対してデジタルは、安定した絵を描くことができます。修正も何度でもできるし、同じ絵を複製することも容易です。仕事としては正確に描きやすいデジタルを使うことが多いですが、揺らぎのある絵を許していただけるときにはアナログの絵も使っていただいています」
ーーー描く楽しさはどちらが勝ちますか?
「難しいところなんですが、アナログのほうがシンプルに楽しいと思いながら描いているところはありますね。インクを紙につける瞬間や乾いたときにどうなるんだろうっていう不安定さにワクワクやドキドキ感を感じます。遊びの要素が大きいです。デジタルはやりたいゴールに向かってどこまでも突き詰めることができます。それが面白いです。微妙な調整も後からできますし、アナログでは『ここの水彩は滲まないで欲しかったのに…』というコントロールできない部分がありますが、デジタルにはそれがない。表裏一体みたいな感じなんですよね。全部できちゃうから逆につまらなくなっている部分も正直あります」
ーーーデジタルの絵だとこだわりすぎて逆に時間がかかるという話を聞くことがあります。
「それはありますね。永遠に直せるからいつまでも手が止まらない。自分が探究した絵が仕上がったときにすごくキレイにまとまりすぎて面白くないなぁって思うこともあります。でもそんなときは、ボタンひとつで簡単に戻りたい箇所まで戻せるので、何度だって繰り返せる。ループしてしまうこともあります。アナログだとインクが乾くまでの時間に一旦考える時間ができるので、そういうのも大事なんでしょうね。だから、デジタルで描くときは『戻るボタンを押さない』という謎ルールを作ったりしていて。使い分けが難しいなと思いながら両方で描いています」
ーーー絵を拝見するとデジタルの絵もアナログで描いたような雰囲気ですよね!
「そう言っていただけて嬉しいです。デジタルの水彩だなってわかるところをいかに曖昧にするかを気にして描いています。iPadで描いていますが、アプリ内のブラシ設定と質感や色合いの調整によって出来上がりが変わるので、そこを重点的に探究して調整しています」

ーーー1枚の絵を描く中でさまざまな工夫をされているんですね!
「そうですね。いろんなことを試しながら描いています。最近は万年筆だけではなく、筆とインクでさらにシンプルに描くのが面白いなと思っています。そこに万年筆で線を足したり、色を限定して描いてみたりもしてみたいです」

お気に入りの1本:ツイスビー/ ECO karashi-iro
2021年11月30日に日本限定1000本の万年筆を販売しました。現在は購入できないのですが、キャップと尻軸の色がこだわりです。少し赤みがあって、トーンを落としたカラシ色になっています。5000円ほどで(現在は税抜き7000円)買えて、このクオリティは感動ものです!
PROFILE
2017年よりフリーランスのイラストレーターとして活動。主に万年筆と水彩、iPadを使って描いている。人物と動物の絵が得意。ブログでは好きな文房具や道具の解説もしている。