砂糖ゆき/“おいしそう”は老若男女問わず 人間に欠かせない感覚

“おいしいイラストレーション”をテーマにお菓子など食にまつわる絵を描く砂糖ゆきさん。思わず食べたくなる絵には、砂糖さんのおいしさの追求が詰まっていました。
“おいしそう”は老若男女問わず
人間に欠かせない感覚
――東北芸術工科大学に入学されるまでは、ほとんど絵を描いたことがなかったそうですね。
「絵の勉強は大学からです。グラフィックデザイン科だったのですが、デザインの勉強もしつつ自主制作でイラストを描いたり、イラストを得意とする先生のゼミに入って絵を学びました」
――在学中も食べ物の絵を描かれていたんですか?
「まだ模索している途中でした。在学中に行なった個展では朝ごはんをテーマに絵を描きました。食べ物を描きたいとは当時から考えていたように思います」
――砂糖さんが描く食べ物は、質感にリアリティがあると感じます。
「私がお菓子を描き始めたきっかけが絵の具でカサカサした焼き目だったり粉の質感を描くのが面白いって気づいたからなんです。それを表現するにはクリームたっぷりのデコラティブなお菓子よりもシンプルで素朴な焼き菓子が合うと思いました。それもリアルに近いお菓子を描く理由になっています」
――アクリルガッシュという絵の具を使われているそうですが、完全にアナログ製作なんですか?
「ラフはiPadで描きますが、完成品はアナログです。アクリルガッシュは速乾性があって、マットな質感がお菓子を表現するのに合っていると思っています。デジタルも極めれば違うと思うのですけれど、私の場合はいつまでも修正を続けて終わりが見えない気がしていて。アナログでは明確に完成したと思えるシーンが絶対にあって、そこに面白さを感じ、そのやり方が気に入っています」


シンプルな焼き菓子の焼き目やスポンジの質感など、おいしさを追求した絵が魅力。ストーリー性を感じさせたい絵には動物を登場させているそう。絵本の要素もプラスされている。
――本物のお菓子かと思って驚きました。リアルなお菓子作りもされるんですか?
「そうですね。実際に作るようになって、お菓子への理解度が一段と深くなりました。例えばデッサンのセオリーで言うとヘコんでいるところは影が落ちるので暗くなるんです。だけどお菓子は出っ張っているところのほうが先に焼けるので色が濃くなる。資料などを見ればわかることではありますが、そのメカニズムを体感することで、より描きやすくなりました」
――本当に料理をするように絵を描いているんですね。
「そうかもしれないです。ドーナツを描くとしたら、最初の生地の黄色っぽい色を描いてから、徐々に濃い色を重ねて茶色く焼き目をつけて、最後に粉砂糖を白絵の具で乗せていくんです。レシピ通りに絵の具を乗せていくような気分で描いている気がします」
――お気に入りのカフェはありますか。お菓子屋さんも行かれますか。
「一番アイデアが浮かぶのは、実はスーパーなんです。ナスの艶だったり、旬の野菜だったりが参考になります。スーパーは仕事とは関係なく行くことが多いので、フッと入ってくる情報が創作に結びついていると思います」
――お菓子屋さんも行かれますか。
「リサーチも兼ねて行きますが、一番アイデアが浮かぶのはスーパーですね。何気なくお菓子の段と深くなりました。例えばデッサンのセオリーで言うとヘコんでいるところは影が落ちるので暗くなるんです。だけどお菓子は出っ張っているところのほうが先に焼けるので色が濃くなる。資料などを見ればわかることではありますが、そのメカニズムを体感することで、より描きやすくなりました」
――陶器になる粘土を使っているのですよね。
「陶器になる粘土を使っているのですが、ラフなどもなく、手でこねながら形を作っていきます。平面ではおいしそうに描く表現を私らしくできてきたなと思えてきて、それを立体で表現したらどうなるんだろうというのが始まりです。まだ手探りでやっているところはありますけれど、少しずつ上達してきたかなとは思っています」
――最後に、砂糖さんの思う“おいしい絵”の秘訣はなんですか。
「食は生き物にとって欠かせない部分ですよね。おいしいと思う感覚は老若男女問わず感じるもの。だからこそ、かわいいだけではなく“おいしそう”と思っていただける絵を描いて、そこに魅力を感じていただけたら嬉しいです」

陶器になる粘土で作成したブローチ。本物のクッキーのようだ。

取材・文/中山夏美
※本記事は『八文字屋plus+ Vol.12 春号』に掲載されたものです。
※記事の内容は、執筆時点のものです。

砂糖ゆき
宮城県出身。東北芸術工科大学卒業。パッケージデザインの会社勤務を経て、イラストレーターとして活動する。書籍やフリーペーパーなどの表紙を担当するほか、オリジナル雑貨、文房具の制作も。’22年には『ぱっかーん!』(エンブックス)という赤ちゃん向けの絵本を出版。