金曜日の文具(第23回/カンダミサコの一本差しペンシース)

カンダミサコ (kandamisako) さんのペンシースが入荷しました。

東北初上陸です!

シースとは「鞘(さや)」という意味。刀を収めるように筆記具を入れるケースのことをこう呼びます)

 

カンダミサコさんは、革鞄や革小物をひとつひとつハンドメイドで作る神戸の職人さんです。

革選びから縫製までこだわって丁寧に作られているので、末長くご愛用できます。

今日はロングセラーである、一本差しのペンシースをご紹介します。


革の万年筆ケースというと、いかにも高級筆記具を保護する、重厚で男性的な製品というイメージがあります。色合いの経年変化を楽しめ、使い込むほどにちょっと無骨にもなっていくという感じ。

「カンダミサコ」のペンシースは、それらとは異なり、一見して柔和な印象。

それは革をくるりと丸めて筒状にしたフォルム、紐もベルトもないミニマルなデザイン、サイズ感のかわいさなどに由来していると思います。

実際に手にとってみると、ふにふにと柔らかく弾力性があってソフトな感触。

ですが、表皮は傷つきにくく、しなやかで耐久性があります。

鞄やポケットの中にわりと無造作に入れても問題ありません。

また、筆記具をじゃらじゃら詰め込んだペンケースの中に入れる際も、ほかのペンと接触するのを気兼ねせず持ち運びできます。

素材には、ドイツシュリンク(シュランケンカーフ)という、生後6か月以内の仔牛(カーフ)の革を圧縮(シュリンク)加工したものを使用(これについては、下のインタビューでカンダさんにお答えいただいています)。


ペンシースの内側には、マトリョーシカのようにもうひとつ筒状のレザーが縫いつけてあって、ペンのクリップを差し込めるようになっています。

このクリップホルダーでペンが抜け落ちないように固定する仕様です(最初は閉じてて差し込みにくいですが、使っているうちに馴染んで通しやすくなります)。

取りつけ位置が左右で若干ずれているのがポイント。

ロゴが入っている方は入口から深め、反対側からは浅い位置にしつらえてあります。

収納するペンの形状やクリップ位置に合わせて、どちらから差し込むか使い分けることができます。

(クリップが頭より下がった位置から始まっているものは、ロゴ側から差してあげると頭が飛び出ることなく収められます)

 

取り出す際は、ペンのお尻の方から指で押し出してやるとスムーズです。

個人的には、革の上からぎゅっぎゅと押してやるのがやりやすいと感じました。


使用可能なペンのサイズは、長さ約140mm、直径約15mm、クリップ幅8mm程度までとされています。

カンダミサコHPでは、目安として、ラミーダイアログ3、アウロラオプティマ、ペリカンM800の名前が挙げられています。

店頭に並べている万年筆を収納してみました。

M800と同型のM805や、パイロットカスタム742はジャストサイズで収まります。

アウロラのカレイドスコープ。

実は、よく来店されるお客さまが、アウロラの万年筆用にこのペンシースを使っていらしたのを目にしたことが、当店で取扱うきっかけになりました。

丈夫でかわいく、とても気に入っているとのことです。


ドイツシュリンクは発色が良く、色数も多い革なので、ペンシースのカラーバリエーションも豊富です。

在庫がある今ですと、華やかな色からシックな色まで、多彩な種類の中からお選びいただけます。


カンダミサコさんにお話をうかがいました。

 

Q. このペンシースが生まれたきっかけはなんだったのでしょうか

材料の革をなるべく無駄なく使い切りたい、というのがありました。

小物だけでなく、鞄も作っているので、鞄であまった残りの革を使ってなにか作れないかと、いろいろ考えていた中で生まれたもののひとつです。

ただ、ステーショナリーは革との相性が良いと思っていたので、上手く形につながったと思います。


Q. 素材のドイツシュリンクについて改めて教えてください

ドイツシュリンクという革は、柔らかく弾力もあり、表面も強く汚れもつきにくい、非常に上質な革なので、大切なペンを包みこんで保護するのにも最適だと思っています。

色数の豊富さと、絶妙な色合いも魅力です。

型押しではなく、革を縮める加工が施されているため繊維が緻密で、表面のシボ(凹凸)の出方も部分や個体によって表情がまったく異なります。

そういった点も楽しんでいただければと思います。


Q. デザインや形状で、こだわったことや気をつけたことはありますか

ペンシースのような、はじめから入れるものが決まっているものは、デザインにこだわるというより、用途に合わせた形を無理のないようにつくっていく、という感じでしょうか。

たとえば、全体の形はペンの頭とペンクリップの位置関係から考えて台形に決まりました。

クリップホルダーの長さも、はじめは左右均等にしていたころ、お客さんから「ペンクリップがペンの頭よりだいぶ下がった位置からはじまっているものもあるよ」とペリカンのビンテージを見せていただきました。

そこで「こうしたらどう?」とアドバイスをいただいたことで、現在の形におさまりました。

ほかの製品もそうですが、大まかなデザイン・形状が決まれば、細かいサイズや部分に関しては、何度もサンプルを作っては使用感を試し、それを繰り返して微調整しながら決めていきます。


Q. 制作するうえで、難しいところや手間をかけている点はどこでしょうか

ドイツシュリンクは特に、手のかけ具合が最終的な製品の出来に大きく影響してきます。

小さく、作りがシンプルであるほど、細かいアラが目立ちやすくなるので、縫製やコバ処理(革の断面処理)などの細部を丁寧に仕立てるように気をつけています。


Q. 余談ですが……「カンダミサコ」のロゴマーク、植物に鳥が生えている(?)ような、とてもユニークなデザインです。これについてもよろしければ教えていただけますか

カンダが学生時代に絵を描いており、その時に製作し気に入っていた一枚の絵をデザインし直してロゴとして使っています。

もともと鳥の色彩やフォルムが好きで描いた絵なので、特定の鳥をイメージしているわけではありません。

ロゴにする際に込めた強い意味や思いはなかったのですが、商品を作るときに目指していること(美しさ、楽しさ、面白さ)が表せているのではないかと思います。


Q.ほかに、これまでの制作や販売で印象的な出来事などありましたら是非

出来事とは違いますが、ペンシースの販売を始めて、かれこれもう10年以上になります。

はじめは需要があるのだろうか? となかば半信半疑で、伺いを立てるように始めたことを思うと、今でも地道に売れ続けていることに日々驚いています。

この度、八文字屋さんでもお取り扱いしていただけることになり、ありがたいかぎりです。東北地方でははじめての取扱店となるので、ぜひ多くの方に手にとっていただければと思います。


お忙しい中、本当にありがとうございました……!

カンダさんからは、

「ペンシースというもの自体がある意味ニッチな商品です。こういうものを必要としている人にできるだけ知ってもらって、きちんと届けるにはどうすればいいだろう、ということをいつも考えています」

とのお話もあり、当店をご利用のお客様の中に必ずそういう方がいるはずだと思いました!

各カラーや、二本差しペンシースについてもご紹介したかったのですが、長くなりましたのでまたの機会に。

 

シンプルな機能美でやさしく包み込んだペンを軽やかに持ち運ぶ、「カンダミサコ」のペンシース。 

八文字屋本店・OnlineStoreで取扱い中です。


一本差しペンシース

¥ 3,300

 

(文・写真 ナガオカ)